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「エン!!」
崩壊して行く逆さまな世界では、レーヴェの声も轟音に掻き消されて満足に響かない。
匍匐で身体をはいつくばらせながらも、何とか円城の元にたどり着く。
「世界の……未来とやらは……救えたのか?」
円城の疑問にレーヴェは小さく俯いた。
始めからこの戦いは、未来を救うなどと言う大それた話では無いのだ。
ただの生存争い。
死ぬはずの人間達が、閉じた世界で必死にもがいていたに過ぎない。
未来の針は当の昔に進んでいる。
復活した人間が生を切望した結果でしかない。
ある意味、アフティの願望は純粋だったのかも知れない。
理不尽な死を前に、生に焦がれない人間はほぼいないのだから。
生き残るチャンスがあるならば、それに縋るのは当然の選択と言えよう。
そう――生への執着は、本能的に持つ生命の欲望なのだ。
『死■ない。我は■望。■者の願い。我は三度甦る』
海面から不快な声が漏れ始めた。
レーヴェの顔色が一瞬で青ざめる。
それはアフティが自らの身体から抜き出した、黒い塊が落ちた場所だ。
そこから黒い泥のような腕が飛び出している。
流石に円城も顔が強張る。
戦いたくても今では立つ事すらままならない。
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