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冥府に飲み込まれた黒い炎が拡散するように、空間全てに拡がっていく。
それは水の中に落ちた黒い顔料が、水を濁すように汚染して行く様に似ている。
「空間浸食?!」
「追連・黒式“裂空”!」
続けざまに妖刀が唸る。
切り上げられた剣閃が、黒い炎の中心を裂け目のように切り開く。
「追練・黒式“煉獄”――錬鎖“崩裂獄”!!」
「連撃――?!」
息を呑むネメシスの前で、空間が砕け散り黒い炎が溢れ出す。
“虚世の焔”と滅陽神流剣法の混成攻撃は、正しく世界に風穴を開けたのである。
黒い炎の洪水がネメシスを包み込む。
ただの人間ならば、これで精神と肉体を同時に焼かれて絶命だろう。
だが、ネメシスは不愉快そうな顔をすると腕を振り払った。
見えない“何か”に遮られたように炎が散乱する。
吹き飛ぶ炎を見ながらネメシスは目を細めた。
神の精神を焼き尽くすまでは行かないようだが、その素体となる身体は人間のものだ。
一撃で腕が焼け爛れている。
「多重神域防壁を透過しているのか……厄介な炎だ」
神の周囲は擬似的な神域に変換されている。
それは幾重にも張り巡らされた神聖防壁より強固な、世界の壁である。
今では大規模な神域汚染すら発露しているのだ。
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