不条理と言う名の奇跡 #2

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冥府に飲み込まれた黒い炎が拡散するように、空間全てに拡がっていく。 それは水の中に落ちた黒い顔料が、水を濁すように汚染して行く様に似ている。 「空間浸食?!」 「追連・黒式“裂空”!」 続けざまに妖刀が唸る。 切り上げられた剣閃が、黒い炎の中心を裂け目のように切り開く。 「追練・黒式“煉獄”――錬鎖“崩裂獄”!!」 「連撃――?!」 息を呑むネメシスの前で、空間が砕け散り黒い炎が溢れ出す。 “虚世の焔”と滅陽神流剣法の混成攻撃は、正しく世界に風穴を開けたのである。 黒い炎の洪水がネメシスを包み込む。 ただの人間ならば、これで精神と肉体を同時に焼かれて絶命だろう。 だが、ネメシスは不愉快そうな顔をすると腕を振り払った。 見えない“何か”に遮られたように炎が散乱する。 吹き飛ぶ炎を見ながらネメシスは目を細めた。 神の精神を焼き尽くすまでは行かないようだが、その素体となる身体は人間のものだ。 一撃で腕が焼け爛れている。 「多重神域防壁を透過しているのか……厄介な炎だ」 神の周囲は擬似的な神域に変換されている。 それは幾重にも張り巡らされた神聖防壁より強固な、世界の壁である。 今では大規模な神域汚染すら発露しているのだ。
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