不条理と言う名の奇跡 #2

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「此処まで接近したのは褒めてやろう。だが、それが貴様の限界だ」 「そうか? お前は既につんでいるぞ」 ガルンが珍しく含み笑いを浮かべている。 そこでようやくネメシスは自らの過ちに気付いた。 身体が黒い炎に包まれている。 ガルンの炎が足元から競り上がって来ていたのだ。 刀に目を取られすぎて、そちらに気付かなかったのである。 「馬鹿な?!」 神の精神には“虚理の殺意”でも打ち砕く威力は無い。 だが、その依り代たる肉体は人間のモノだ。 “虚世の焔”に耐えうる強靭さは無い。 焼け爛れる肉体が端から炭となって崩れていく。 「神たる我が……人間に……敗れるだと?!」 「その自信が負けた要因だと気付かないのが――神の驕りだ」 ガルンはそう告げると刀を振り上げた。 神の驕り――その最たるものが力の出し惜しみである。 世界に顕現した神には体力や精神力と言う概念が無い。 彼等は持ち得た神霊力の全てを全力で放出すると、その力をそうそう回復する術がないのだ。 その為に神性存在などは代行者を用立てる。 人を媒介に力を貸し与えている限りは、神域から出る必要性が無い――安全圏だからだ。 ガルンの師、グラハトは闇主側の代行者であった。
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