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「此処まで接近したのは褒めてやろう。だが、それが貴様の限界だ」
「そうか? お前は既につんでいるぞ」
ガルンが珍しく含み笑いを浮かべている。
そこでようやくネメシスは自らの過ちに気付いた。
身体が黒い炎に包まれている。
ガルンの炎が足元から競り上がって来ていたのだ。
刀に目を取られすぎて、そちらに気付かなかったのである。
「馬鹿な?!」
神の精神には“虚理の殺意”でも打ち砕く威力は無い。
だが、その依り代たる肉体は人間のモノだ。
“虚世の焔”に耐えうる強靭さは無い。
焼け爛れる肉体が端から炭となって崩れていく。
「神たる我が……人間に……敗れるだと?!」
「その自信が負けた要因だと気付かないのが――神の驕りだ」
ガルンはそう告げると刀を振り上げた。
神の驕り――その最たるものが力の出し惜しみである。
世界に顕現した神には体力や精神力と言う概念が無い。
彼等は持ち得た神霊力の全てを全力で放出すると、その力をそうそう回復する術がないのだ。
その為に神性存在などは代行者を用立てる。
人を媒介に力を貸し与えている限りは、神域から出る必要性が無い――安全圏だからだ。
ガルンの師、グラハトは闇主側の代行者であった。
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