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「確かについ先日ケリが着いちまったからな。まあ、ある意味兄さんは運が良い。また“黒き戦鬼”が出たらしいからな。やっこさんが現れると敵味方死人が増えるらしい。近付かないのが吉さ」
自信満々に告げるバーテンを、青年は無視して葡萄酒を呷る。
興味がなさそうな青年を見て、バーテンは軽く肩を竦めた。
「ここら辺にモバイル・ラビュリントス【移動迷路】が出たと聞いたが……何か噂を知らないか?」
青年は葡萄酒を飲み干すと、同じ葡萄酒の追加オーダーを出しながら質問した。
バーテンは顎を抑えて天井を仰いだか、とんと聴かないと告げる。
「最近は面白い話は聴かんな~。最近なら奇妙なキャラバンの話なら聴いたがね」
「奇妙なキャラバン?」
「紙芝居キャラバンって言われててな。神出鬼没の移動パン屋ってーから笑えるよな」
珍味な話に釣られたのか、後の円テーブルに座る戦士風体の男が話に割り込んできた。
顔がかなり赤い。
出来上がっているのは間違いない。
「あ~、見たぜそれ。魔法でパンを焼く奇妙な姉ちゃんのキャラバンだろ? 妙なリングを振るだけで、魔術を使えるほど凄腕っぽいんだが何故かパン焼いてんだよな」
そう言って盛大に大笑いする。
魔術を学んで何でパン屋だと、何処からか笑い声が聞こえる。
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