一の焦点

2/6
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
朦朧とした意識を覚醒させたのは、頭に響く嫌な痛みだった。 偏頭痛のように、短い感覚でこめかみに痛みが走る。 (いっつ……。どうしたんだボクは) 目を開いたつもりが、辺りは真っ暗で何も見えない。 頭が朦朧としていて意識が混濁して来る。 貧血のために目眩が起こっているような、平衡感覚が狂っている感覚はあった。 その為、視界がブラックアウトしているのか、辺りが暗闇に包まれているのか判断出来ない。 「どこ……だよ、ここ?」 両脚に激しい痛みが走る。 不思議に足を見るが、真っ暗で何も見えない。 仕方なく直に触れて確認しようとする。 伸ばした手は、そこには触れるべき足首が消失している事を伝えてきた。 漠然とした現実が襲いかかってくる。 「えっ……?」 気付いた為か、足に灼熱の痛みが走り出した。 唇を噛み締めて足を動かす。 足首より先の感覚がない。 生唾を飲み込んで、悲鳴を上げたい気持ちを押し殺す。 声を上げる事を本能が拒んでいる。 (なんだ? 何が……どうなってるんだ) 落ち着いて自分を見つめ直す。 自分が何者で、何をしていたか記憶を揺り動かす。 (ボクは……ボクの名前はラディアリア・ブルースフィア。そうだ……今は戦争中だったんだ)
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!