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不条理と言う名の奇跡 #3
そう言ってから、小声でボソリと誰の耳にも聞こえない程度に、
「まあ、召喚神殿を壊したのが“今の俺”とは思わなかったがな」
と呟いた。
それが聞こえたのか聞こえていないのか、レーヴェは独り言のように言葉を紡ぎ出す。
「ボクは……偽りの生でも精一杯生きたよ。どうせ消えるなら……ボクも此処でエンと一緒に消えたい。だから、君の手で終わりにして欲しい」
真摯な瞳でガルンを見るレーヴェを見て、円城は露骨に眉を吊り上げた。
「はっ?! 何言ってんだレーヴェ! てめぇーはまだ生きてんだろうが! 何馬鹿な事をほざいてやがる!」
レーヴェは叫ぶ円城を抱き寄せて膝の上に寝かせた。
その顔は酷く寂しそうに見える。
「そもそもレーヴェ・ブロイエシュテルンなんて人間は居ないんだ。ボクは……ラディアリア・ブルースフィア。冥魔大戦で死んだ……人間何だろ?」
回答を求めるようにガルンに顔を向けた。
ガルンには、その顔には朧気に見覚えがある。
他人の空似と思っていたが、確かに同胞であり部下だった女性の顔に似ていた。
かつて所属していた黒鍵騎士団の部隊長の一人。
冥夢の幻域に進行する前に、地上戦で死んだと聞いた名前だ。
「確かにラディアリア・ブルースフィアは死んだと聞いた……聞いたが……お前はまだ死んではいない……」
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