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DARKBLAZE excursus #2
そこでガルンの動きがピタリと止まった。
ゆっくりと辺りを見回してから真上を見上げる。
「……何の気配だ?」
真上を見つめたまま、精霊の眼に切り替える。
すると階層を隔てる岩盤の中に、奇妙な黒い海のようなモノが見えた。
悪霊か怨霊が、意味なく水のように溜まっているような不可解な現象。
だが、ゆっくりと拡散して行く姿は地面に落ちた、ただの水のようにしか見えない。
ガルンは直ぐにそれを無視する事に決めた。
高位存在が死ぬ間際に呪いを残す事など良くある話であり、死に満ちたこの洞窟内では些細な現象に過ぎない。
冥魔族を皆殺しにした今、ここに逡巡する意味は無いのだ。
ガルンは背中の鞘に刀を仕舞うと、風のように走り出した。
上層階には、そのまま置いてきた少女の亡きがらがある。
そのまま放置など出来る筈も無い。
上へと進む度に辺りには奇妙な気配が残っていた。
奇声を上げているのは、主を失った幽冥獣か暴走途中の魔人の成れの果てか。
どちらにしろ、まともに精気のある存在は残っていない。
後は“死にぞこない”か、“まがい物”の気配だけだ。
どちらにしろ死に絶える瑣末な存在である。
だが、それらに少女の亡きがらを傷付けられたらたまったものではない。
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