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――仕事が非常しにくい。
「…………」
暇なんだろうか? 何故かずっと、こっちを見ているし。
「…………」
一日中、俺の顔をずっと見ていて飽きてこないんだろうか?
「…………」
「あの、気が散るんですけど……」
何のチェックしてるんだか知らないけど、本当に気になってしょうがない。
――どこか、刺すような視線――山上先輩の放ってくる、グサグサッと体を突き刺す視線を毎日浴びていた。そんな感じでずっと見られる状態で仕事をするのは、非常につらかった。
「間違えないようにこうして、無言のプレッシャーをかけていただけだから」
(何だよそれ、ただの嫌がらせじゃないか)
「それはどうも、有り難うございます」
使っているボールペンが、ミシミシ軋むような音をたてる。山上先輩の視線ってば、あからさまな嫌がらせじゃないか。
「これくらいのプレッシャーに負けていたら、いざというときに役に立たないからさ」
「はぁ、肝に銘じておきますね」
にっこり笑う山上先輩に、額にコッソリ青筋立てながら必死に笑って答えた。
傍から見たら、とても仲のいい関係に見えるだろう。面倒見のいい先輩が、後輩を可愛がってるそんな感じ。
なのに実際は――
「巧妙過ぎるだろ、まったく!」
そしてこの人と喋ってるだけで、本当に倍の神経を遣う。もう気を遣うレベルを、とうに超えている。
呆れ顔したまま山上先輩の視線を何とか無視して、黙々と書類をこなすことに専念した。
当の本人は携帯を弄ったり、フラフラ出掛けたり俺を監視したりと、毎日を過ごしていた。
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