virgin suicide :運命の出逢い

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 幸せは、どうして長く続かないんだろう? だって幸せを感じるのって、ほんの一瞬だけのことが多い。それに、幸せの種類もたくさんある。    例えば忙しい仕事をやり終えた後の、一口目の生ビールという味わいの幸せ。    そして現在、迷子のおばあちゃんを無事に家へ送り届けて、ご家族の方々にお辞儀をされながらお礼を言われている。    まさに今も幸せだったりするよなぁと、しみじみ思いながら微笑んだ。 (こういう積み重ねで、どんなにつらい仕事でも頑張れるんだよなぁ)    交番に戻る道すがらそんなことを考え、勤務している交番に戻っていた。    小学生の時の夢を叶え、警察官になって交番勤務一年目の新人、水野 政隆(みずの まさたか)。毎日楽しく、お仕事に励んでおります。    たまたま出くわした空き巣を捕まえたり酔っ払いのお父さんを介抱したり、今みたいに道案内したりといろんな人との出会いに日々感謝している。 「そうだ、さっきのおばあちゃん、また迷子になったら困るから、住所と名前をメモしておかないと」    たどり着けたのは迷子札を首から、きちんとぶら下げていたからだった。 「メモメモ~」 「そこのポリ公! 走ってるそいつを、絶対にひっ捕まえろっ!!」    ブツブツ言いながら道の端っこに佇む俺に、後方からやって来た誰かが大声で叫んだ。どこか切羽詰まった感じの、渋い低めのハスキーボイス――    その声に驚いて顔を上げ、慌てて後方を窺うと、見るからにガラの悪そうな男が必死にこちらに向かって走って来る。その後ろに同じようなガラの悪い男たち数名が男を追いかけるべく、息を切らして走っていた。
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