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突然の出来事に、フリーズしたままデカ長を見つめてしまった。そんな視線を受けて、細い垂れ目を大きく見開いたまま首を傾げる。
「お前たち……何、やってるんだ?」
デカ長の愕然とした様子に、うわぁとパニクった。当の山上先輩は完全にデカ長をスルーして、俺に抱きついたままをキープしていた。
デカ長の言葉は、これから会議が始まるというのにこんなところで何をやってるんだという意味だと、頭では理解していた。それなのに――
「あの、その、えっと……俺たち、愛し合ってるんです!」
思わず、口元を右手で隠してしまった。その台詞に山上先輩がいきなり、ガバッと起き上がる。
機敏に立ち上がると、ビックリ顔している俺の肩に両手を置いて、ゆさゆさと激しく体を揺さぶってきた。
「水野っ! 僕のことを愛してるのか!?」
一重瞼の下にある熱を帯びた瞳が、俺を捕らえて離さない。
「お二人さん揉めてるトコ悪いんだが、捜査会議が始まるんじゃないのかね?」
「捜査会議!? そんなのクソ食らえだよ。僕のヤマは、今は水野だからっ!」
(ひ~、デカ長の助け船を拒否った)
「お前なぁ。ここは皆が使用する仮眠室だぞ、ラブホじゃねぇ~んだっ! それか誰も入れないように、プレートを使用中にしとけ!」
「すみません、本当にすみませんっ!」
俺はデカ長に頭を下げまくるしかできなくて、顔を赤くしたり青くしたり大忙し状態。相変わらず、頭は混乱したままだった。
「俺を無視した山上もアレだが、水野もすげぇことを言うんだな。一瞬、出て行こうと思ったぞ」
怒ったと思ったら、もう笑ってるデカ長。コロコロ変わる表情に、正直ついていけない。
「とにかく。お前らが仲が良いのは分かったから、急いで捜査会議に行けや。俺は寝る……」
アクビを噛み殺し、左手でシッシと俺たちを追い払う仕草をした。
内心、納得していないであろう山上先輩は俺の袖を乱暴に掴んで、仕方なしに会議室へ苛立ちながら向かったのだった。
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