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捜査会議どころではない。さっきから山上先輩は、まったく落ち着きなくて――貧乏ゆすりを激しくしたり、手にしているボールペンを無駄にカチカチしたり……隣でその様子を見ているだけでハラハラするしかなくて、この後のことを考えると頭が痛くなった。
(――ううっ、会議内容がまったく頭に入ってこない)
「こら、山上! さっきから体を揺さぶって、トイレに行きたいのか?」
「違いま~す。このヤマにワクワクしちゃって、すっごく体がウズウズしているだけです」
そう言って意味深な笑みを浮かべて、俺の顔をガン見した。視線がどうにも痛くて、慌てて目を逸らすしかない。
「目障りだから大人しくしてろ。捜査中もだぞ」
「大丈夫ですよ~。最近始末書、書いていないし」
「そういえば……」
本部長同様に他の刑事たちも、ヒソヒソ何かを話している。
「僕、チームワークの大切さがどんなに大事か、今頃になって分かったんです。なっ、水野くん?」
無邪気に笑いながら、俺の肩をポンポン叩いた。このタイミングで、話を振らないで欲しい。いろいろ複雑だから……新米の俺が足を引っ張っているから、面倒を見ている山上先輩が自由に動けないだけなのだ。
「とにかく。じっとしていろ、分かったな?」
「了解で~す!」
胡散臭い敬礼してからゆっくりと頬杖をつき、前を向いた。そして机に置いてある書類に、何かを書き込み始める。
「……それで、五丁目近辺の地取りについて」
本部長が話を戻し、説明し出した途端――
「その地取り、僕やってます。今日中に報告書にまとめて、すぐに提出します!」
いつも以上に元気な感じで、山上先輩が生き生きと答えた。
常にべったりしていたワケじゃなかったけど、この人いつの間にそんな仕事をしていたんだろう?
「相変わらず仕事が早いな。助かる」
本部長が満足げに微笑み、話を再開した。
「とっとと書類を終わらせて、僕のヤマの捜査しなきゃ。な、水野くん?」
俺の耳元で、色っぽく囁く山上先輩。逃げ出したい感が満載である。
「だからお前は会議内容、しっかりとメモしておけよ。僕のために……。じゃないとどうなるか。分かるよな?」
恐怖でコクコク頷く俺に、山上先輩は満面の笑みを浮かべながら、サクサクと仕事をこなしたのだった。
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