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「仕事が終わったら、水野の家で話をしよう」
会議が終わり、それぞれの仕事を片付けるべく作業中に告げられた唐突な提案に、眉根を寄せて顔をすっごく曇らせた。
「山上先輩の家みたいに綺麗じゃないし、きっと落ち着きませんよ……」
「僕の家はハウスキーパーが来てるから、いつも綺麗なんだ」
「へぇ、そうですか」
さすがお坊っちゃま、お金をかけるところが庶民とは違う。非常に羨ましい。
「水野の部屋、どんなのか見てみたい。いいだろ?」
「そんな顔して言われても……」
お地蔵様に向かっているように、両手を合わせて拝みたおす。あからさまに、こうして頼みこまれても困り果てるしかない。
「水野のおねだりには負けるからな。僕なりのおねだりの仕方なんだけど?」
「何の話ですか」
「鑑識のゲンさんが言ってたぞ。水野にお願いされると、何だか断れないって。必死になって寝癖がついた頭を下げる姿に、胸を打たれるってさ」
僕は寝癖なんて格好の悪いことをしないから。とわざわざ付け加え、俺の右腕を強引に掴んでデスクから立たせると、捜査一課から連れ出すようにどんどん歩いて行く。
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