104人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
(……お互い仕事がまだ終わっていないのに勝手に切り上げて、俺の家に向かうなんて大丈夫なんだろうか。それとも山上先輩は、仕事をちゃっかり終えたとか?)
「で、水野の家はあっちだろう?」
颯爽と署を後にしなぜだか俺の家の方角に向かって、迷いなく進んで行く。山上先輩もしかしたら、俺の家の場所を知ってる? それって正直、ストーカーちっくだよ……
俺が慌てふためいている間に、あっさりと自宅に到着してしまった。
「とりあえず、その辺に座って下さい。お茶くらい淹れますから」
「お茶なんかいらない」
おどおどしている俺を、後ろからぎゅっと抱きしめてきた山上先輩。
「なぁんで大事な台詞、デカ長に向かって言っちゃうかな」
心底呆れた声で言う。そりゃ当然だ……
「いつから僕のこと、好きになっていたんだ?」
言いながら、俺の首筋に唇を滑らせる。途端に、背筋がゾクリとした。
「つっ……ちょっ、そんなことされたら、ちゃんと答えられませんよ」
「僕を焦らした、水野が悪い」
そう言うと、歯を立てて噛みつこうとした。慌てて後頭部の髪の毛を引っ張り、無理矢理引き剥がす。
「もう! 目立つところに歯形を付けるの止めて下さい。この間、関さんに散々、からかわれたんですから」
「僕のだっていう印、付けたいだけなんだ」
嫌がる俺を無視して首筋に噛みつき、しっかりと痕を残したというのに口を尖らせて不機嫌な顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!