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イケメンなので口を尖らせていても、なぜか様になるのが不思議だ。俺が口を尖らせたら、ただの駄々っ子になるだけなのに。
「さっきの質問、俺もそのまま返したいです。いつから好きになったんですか?」
腰に手を当てて、山上先輩を見上げる。さっきまでの甘い雰囲気はどこに、一触即発な状況になった。
「お前と初めて会った日、僕たち数人の刑事で被疑者を追っかけてたろ?」
「そうですね……」
そのときのことを、ぼんやりと頭の中で思い出そうとした。
「水野ってば被疑者に肘鉄で思い切り頭を殴られて、かなり痛かったはずなのにさ。その痛さを微塵も感じさせずに、僕の横に並んで走って来たろ。ニコニコ笑いながら」
涼しげな一重瞼を細くして、懐かしそうな顔をする。
「俺、笑ってましたっけ?」
小首を傾げながら、顎に手を当てて考えた。当時ヘマをして慌てていたので、イマイチ記憶が曖昧だ。
「笑ってたんだよ、水野。そして綺麗なフォームで走って、被疑者を追っかけて行ったんだ。その姿に僕は多分、一目惚れしたんだと思う」
「そう、だったんですか……」
俺にとってはよくある日常なのに、その姿に一目惚れするなんて相当変わってる。
「水野、想ってるだけじゃ気持ちは伝わらないんだよ。いつから僕のことが好きだったんだ?」
縋るように肩に両手を置かれたせいで、逃げ出せない状態に追い込まれてしまった。面と向かって自分の気持ちを告げるが恥ずかしくて、視線をあちこちに彷徨わせるしかない。
「えっと……はっきり認識したのは、山上先輩が風邪でダウンしたときです。くたばってる姿を見ていたら、何だか愛しさがじわじわと込み上げてきてしまって」
頬に熱を感じながら告げると、げえぇという呆れた声がした。
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