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「僕がダウンしたのって、かなり前じゃないか。しかも何で人がくたばってる姿を見て、ムラムラするかな。お前……」
「ムラムラしてませんってば! そうじゃなくて放っておけないっていうか、支えなきゃみたいな」
言葉で気持ちを伝えるには、何か上手くいかなくて本当にもどかしい。
「そう想ってるのに僕のことを散々、これでもかとキズつけてくれたよな。あれは、どうして?」
――自宅が取調室に早変わり。何だか容疑者の気分である。
「それは……山上先輩の気持ちが、正直怖かったんです」
「今まで付き合った奴には、キモい・ウザい・重いと言われたことはあったけど、怖いは初めてだな」
どこか落ち込んだようなトーンで告げながら、自嘲気味に笑う。俺を掴んでる両手に、ぐっと力が入った。
時々こういうやるせなさそうな顔をするから、目を離せなくなってしまうんだ。今、どんな気持ちでいるんだろう?
「怖いのはきっと、その想いの深さに俺が溺れてしまって……。自分の足で立っていられなくなりそうで、すごく怖いんです」
恐々と山上先輩をじっと見つめた。
「多分……俺も同じように山上先輩のことが好き、だから……」
貴方なしでは生きていけなくなりそうで、本当は怖いんです。
「だったら二人で、支えながら立ってればいいじゃないか。一緒に仕事してるみたいにさ」
そう言って息が止まりそうなほど、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「溺れたら一緒に、這い上がればいい。想い合ってるなら……きっとできるはずだろ?」
その言葉に胸が熱くなってじーんとしていると、ポケットに入れてたスマホが突如鳴り響いた。
「おいおい……。これからってときに、どこのお邪魔虫だ?」
イライラしながら、無造作に俺のポケットに手を突っ込む。ディスプレイを確認後、じろりと白い目で見つめてきた。
「水野……お前、二股かける気なのか?」
唸るように言う山上先輩から、怒りのオーラがメラメラと出ているように見える。
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