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「何、言ってるんですか。俺、彼女いませんよ。多分、妹からのメールだと思います」
山上先輩の怒りに顔を歪ませて告げた俺の台詞を聞き、胡散臭そうな表情してから、持ち主の許可なく勝手にメールを確認する。
「あ~、何々。こんばんは、元気にしてる? この間紹介した彼氏、お兄ちゃん良い人だねって言ってくれたけど、全然イイ人じゃなかったです。元カノと私を二股かけてたんだよ、サイテーな男。だからぶっ飛ばしちゃった。なので、お兄ちゃんにお願い。職場にいるイケメン、可哀想な妹に紹介して下さいね。彩音より……」
「水野 彩音、女子大に通う俺の妹です。分かってくれましたか?」
憮然としながら言うと、何だか嬉しそうに口角を上げた。
「僕に妹を紹介しろよ。俺のカレシで~すって」
「何、言ってるんですか。もう……」
(呆れた、何考えてるんだよ。この人は――)
「だって水野の妹、見てみたいし。可愛いだろ?」
「普通ですから、一応。それに絶対、山上先輩には紹介したくないですっ!」
理由は明確。お兄ちゃんには、分かりすぎるくらい分かってしまう。彩音が山上先輩を見たら、間違いなく好きになると思う。兄妹揃って、趣味が同じような気がするから。
「そんな激しく、拒否らなくてもいいだろう?」
「妹だろうが、他の人にも紹介したくないんです」
だって山上先輩は、どこの誰にも渡したくない人なのだから――
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