109人が本棚に入れています
本棚に追加
今日も、いろんな出会いがあった。しかしこの山上という刑事との出会いは、正直微妙である。そのあまりの衝撃に言葉をなくし、顔を引きつらせてしまった。
そんな俺に、突きさしそうな勢いで眉間に指を突きつけられた。ビビッて思わず、顎を引くしかない。
「せせらぎ公園前派出所の水野、インプットしたからな!」
「山上さん、一体何――」
「坊っちゃん。早く連行しないと、デカ長に叱られますよ」
俺の台詞を遮って、他の刑事が叫んだ。
(坊っちゃんって何だか、すごい呼ばれ方してるな。どこぞの御曹司なのか!?)
うわぁと考えてたその時、肩をポンと叩かれハッと我に返る。
「さっきはありがとう。いやぁ助かった、助かった」
振り返ると、垂れ目の刑事がニコニコしながら気さくに話しかけてきた。
「いえ、こちらこそすみませんでした。最初に上手く対処していれば、こんなことにはならなかったんですが」
「しかしタイミング悪かったな。あの山上に、目をつけられるとは」
眉間にシワを寄せて、刑事が憐れむようにじっと見つめる。その視線を不思議に思って、声を潜めながら訊ねてみた。
「あのぅ、その山上刑事って一体、どういうお方なんですか?」
自分に向かってに言い放った上から目線の物言いといい、坊ちゃん呼びされてるところといい、個人的に非常に気になる。
「交番勤務じゃ知らなくて当然だよな。山上の父親が、警察庁のお偉いさんでな。親のコネを使って、うちに来て」
同じように、垂れ目の刑事もコソコソ話す。
「やりたい放題やって、きっちり仕事をこなしてくれるワケなんだが――」
「きっちり仕事をしてくれるのなら、むしろ良いんじゃないんですか?」
言い淀む言葉を不思議に思った。きっちり仕事をこなすって、やっぱりできる刑事なんだ。
「バカ野郎! 法律スレスレの危ないことを、ヤツは進んでやるんだぞ。周りの迷惑を無視して勝手に突っ走るから実際、火の粉被るのが俺たちなんだ」
(うわぁ。それはすっごくイヤかも……)
最初のコメントを投稿しよう!