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「来月行われる刑事任用試験、突然だけど君に受けて欲しいんだ。名前と受験番号を、しっかり記入してくれるだけでOKだから」
次の日、署長が発した第一声――明らかに山上刑事の魔の手が、希望していない刑事課へと導いているとしか思えない。
「このお話、所長の権限でなかったことにできませんよね?」
「察してくれ。上からの圧力等々あるんだよ。我々に拒否権は無いに等しいから」
どこかつらそうな表情を浮かべて苦笑いしながら、目の前にある俺の顔を見つめる。どうしたものかなぁと悩みながら、恐るおそる口を開いてみることにした。
「確か試験を受ける前に、看守の仕事をしなければいけないことになっていますよね?」
「そこで犯罪者の心理や事件について調べたりと、いろいろ勉強になるからね」
「刑事試験を受験する人と、同じように受験させてください。刑事になりたくて一生懸命に頑張ってる人もいるのに、自分だけこの扱いは納得できません!」
「気持ちは分かるが向こうさんは、今すぐ君を欲しがっているんだ」
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