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「お前さん宛てに、山上から遺言……預かってる」
「えっ!?」
驚いて顔を上げるとデカ長はやるせない顔をして、ぽつりぽつりと語り出す。
「山上が撃たれた直後、俺に電話してきたんだ。遺言、聞いてほしいって」
「山上先輩が?」
「ああ。水野が刑事を辞めないように、引き留めてくれってさ。山上はお前さんのこと、何でもお見通しなんだなぁ」
「辞めないように? どうしてそんなこと……」
「僕が手塩にかけて、育てた時間を無駄にするつもりか水野。って言うんじゃないかね。なぁ山上?」
似てない山上先輩のモノマネして墓石へ視線を移し、ここにはいない山上先輩に訊ねた。返事なんて、返ってくるはずないのに――
それから困惑しまくりの俺の顔をじっと見て、とてもつらそうに顔を歪ませる。
「山上が最期に……政隆、ありがとうって、囁くように言ってたよ。俺はそれ聞いて、マジ泣きしちまってな。一人きりで逝く山上が、可哀想でならなかったわ」
その言葉を聞いて、俺は下唇を噛んだ。泣かないように強く噛んだのに、止めどなく涙が溢れてきた。愛してるという言葉より、なぜだかすごく心に響いてしまった。
「山上、せんぱ……」
俺に刑事を辞めるなと言った。貴方の代わりに、刑事を続けろってことなの?
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