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「水野の表彰、本当は山上と交えて三人でお祝いしたかったよ。ほら遠慮せずに、いい加減開けなさい」
「は、はいっ!」
慌てて引き抜いたら、ビールが少し溢れてしまった。
「まったく。山上がいてもいなくても、お前さんのドジっぷりは、しっかり健在だな」
苦笑いして俺の手元を、ポケットから出したハンカチで優しく拭ってくれる。
「すみません……」
「すみませんついでに、これで鼻をかんでおけ」
ポケットティッシュを手渡されたので、頭を下げながらいそいそ鼻をかんだ。
「……何から何までホントに、すみません……」
お世話になりっぱなしで顔を上げられない。上目遣いで目の前を見たら右手に持ってる缶ビールを掲げ、フワッと微笑んできた。その笑顔がすっごく眩しくて、思わず目を細めてしまうくらいだった。
「山上の代わりに水野の面倒を、しっかりと見なきゃだからな。お前さんも決めたか? 山上の遺志を継ぐことを、さ」
その言葉にしっかりとデカ長の目を見て、同じように缶ビールを掲げた。
「山上先輩の命令は絶対ですから……。きちんとしなきゃ、あの世から出てきて、祟られちゃうかもですよね?」
俺たちは笑い合いながら、缶ビールをカチンと当てて乾杯をした。
「良かったな、山上。水野が刑事を辞めなくて。当の本人は幽霊でもいいから、逢いたいだろうけど?」
その台詞に、呑んでいたビールを吹いてしまう。
「本当、デカ長には敵いませんね……」
言われたことは事実なので、あえて否定はしない。
「口だけは山上に負けないな。困ったヤツだ」
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