virgin suicide :貴方が残してくれたもの

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*** 「ミズノン、デカ長がさっきから呼んでるよ。早くしないと雷、どっかーんって落とされるかも」   (――おいおい、トイレに行く暇も与えないってか!?) 「すみませんっ! 今、向かいます」  山上先輩が亡くなってから、あっという間に一年が経過していた。俺に余計なことを考えさせる暇を与えないくらい、デカ長は派手にコキ使ってくれている。それは正直、有難いと言えば有難いのだが―― 「たまには、ゆっくりしたいよね……」  月命日の墓参りくらいさせて欲しいんですが。なぁんてこの間、おねだりをしてみたら。 『死んだ人間よりも、被疑者確保の方が優先順位が超高いんだ。それも分からんのか、このバカ水野はっ!』    垂れた目をキッと引き上げて、俺を睨むデカ長。最近なんかこれに、変人だの変態だの、いろんなネーミングまで付けて可愛がる始末。    ま、否定はしないけどさ。 「ぼやぼやするなっ! 三課から応援要請きたから俺と出るぞ。コンビニ強盗が、立て続けに起こったそうだ。ローラー作戦で、しらみ潰しに行くからって。すぐに準備しろ、バカ水野」 「分かりました。すぐに出れますよデカ長」  いつもと変わらない返答したというのに―― 「……何だろう。すごぉくイヤな予感がするわ。水野、ヘマしたら承知しないぞ!」 「分かってます。心配性だなデカ長は」    笑ってる俺に、心底イヤそうな顔をした。    デカ長が長年培った刑事の勘がこの後当たろうとは、まったく知るよしもなかった。    矢野  翼との運命の出逢い。忘れかけていた恋心のきっかけが、そこで待っていたのだった――  おわり ※その後、転生した山上さんの話を作りました。 『抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい』 概要欄にリンクを貼っておきます!
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