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「ミズノン、デカ長がさっきから呼んでるよ。早くしないと雷、どっかーんって落とされるかも」
(――おいおい、トイレに行く暇も与えないってか!?)
「すみませんっ! 今、向かいます」
山上先輩が亡くなってから、あっという間に一年が経過していた。俺に余計なことを考えさせる暇を与えないくらい、デカ長は派手にコキ使ってくれている。それは正直、有難いと言えば有難いのだが――
「たまには、ゆっくりしたいよね……」
月命日の墓参りくらいさせて欲しいんですが。なぁんてこの間、おねだりをしてみたら。
『死んだ人間よりも、被疑者確保の方が優先順位が超高いんだ。それも分からんのか、このバカ水野はっ!』
垂れた目をキッと引き上げて、俺を睨むデカ長。最近なんかこれに、変人だの変態だの、いろんなネーミングまで付けて可愛がる始末。
ま、否定はしないけどさ。
「ぼやぼやするなっ! 三課から応援要請きたから俺と出るぞ。コンビニ強盗が、立て続けに起こったそうだ。ローラー作戦で、しらみ潰しに行くからって。すぐに準備しろ、バカ水野」
「分かりました。すぐに出れますよデカ長」
いつもと変わらない返答したというのに――
「……何だろう。すごぉくイヤな予感がするわ。水野、ヘマしたら承知しないぞ!」
「分かってます。心配性だなデカ長は」
笑ってる俺に、心底イヤそうな顔をした。
デカ長が長年培った刑事の勘がこの後当たろうとは、まったく知るよしもなかった。
矢野 翼との運命の出逢い。忘れかけていた恋心のきっかけが、そこで待っていたのだった――
おわり
※その後、転生した山上さんの話を作りました。
『抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい』
概要欄にリンクを貼っておきます!
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