0人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
めざしにご飯と豆腐の味噌汁を食べ終わると、水着に着替えて川へ向かった。
「こっちに大きいのいたよ!」
「えぇ!ホント!?見たい!」
姉ちゃんはザブッと潜る。
小さかった俺は、胸の辺りまである水の抵抗に手間取りながら、姉ちゃんのもとへ向かう。
水面から顔半分を水中メガネに覆われた頭が現れた。
「ここ!この石の隙間に!」
俺もおでこにつけていたゴーグルを下へずらし、すうっと息を吸い込むと、川の中へ屈みこんだ。
物心つく前から川で遊んでいた俺は、水に対する恐怖心はなかった。逆に、水中の世界が幻想的に見えた。外界とは違う、浮遊した感覚。揺らいで見える視界。
そんな世界へ行くのも、いつも姉ちゃんが一緒だった。
夜。
月の無い暗闇。
見上げると、そこには星が散らかされていた。
「あ!ほら今流れた!」
「うぇっ!見逃し…あ!流れた!」
降り注ぐ星空。
姉ちゃんはそんなとき、よく口づさんでた。
きーらーきーらーひーかーるー…
俺も乗っかって一緒に歌う。
おーそーらーのーほーしーよー…
周りの大人達も、ビール片手に俺たちの歌を聞きながら星見酒。そんなゆったりした時間だった。
最初のコメントを投稿しよう!