あの日

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俺たちはタクシーで病院に駆けつけた。 廊下で、泣きじゃくってるアカネさんを見つけた。 そこから俺たちは、病室には通されなかった。 霊安室。 ベッドの上、何かが乗ってる。 白いシーツを膨らましてるそれは、動かない。 いたずら?ドッキリ? そうだったらタチが悪い。いや、悪くてもいいからそうあって欲しい。 グルグルと頭をめぐる。 心音がバクバクいってる。心臓が痛いほどだ。 ゆっくりと、ベッドへ向かって歩き、白い布を摘まむ。 ありきたりなシーン。でも… 摘まむ手が震える。出来れば取りたくない。 ゆっくりと、ためらいながら布を取り外す。 その下から、 白い、化粧をされたように白い顔した姉ちゃんが眠っていた。 動けなかった。 この現実を、俺は認めたくなかった。 ―時が止まった― だけど、 だんだんと、 だんだんと現実が、 現実が俺を押し流す。 何かが込み上げてくる。 わからない。なんだろう。 怒り?悲しみ?寂しさ?不安? すべて正解なのだろうが、このときはどれも違うように思えた。 動き始める時間。俺は、堪えきれずに込み上げるものを吐き出した。 「あぁぁぁぁぁ!!!」
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