0人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
俺たちはタクシーで病院に駆けつけた。
廊下で、泣きじゃくってるアカネさんを見つけた。
そこから俺たちは、病室には通されなかった。
霊安室。
ベッドの上、何かが乗ってる。
白いシーツを膨らましてるそれは、動かない。
いたずら?ドッキリ?
そうだったらタチが悪い。いや、悪くてもいいからそうあって欲しい。
グルグルと頭をめぐる。
心音がバクバクいってる。心臓が痛いほどだ。
ゆっくりと、ベッドへ向かって歩き、白い布を摘まむ。
ありきたりなシーン。でも…
摘まむ手が震える。出来れば取りたくない。
ゆっくりと、ためらいながら布を取り外す。
その下から、
白い、化粧をされたように白い顔した姉ちゃんが眠っていた。
動けなかった。
この現実を、俺は認めたくなかった。
―時が止まった―
だけど、
だんだんと、
だんだんと現実が、
現実が俺を押し流す。
何かが込み上げてくる。
わからない。なんだろう。
怒り?悲しみ?寂しさ?不安?
すべて正解なのだろうが、このときはどれも違うように思えた。
動き始める時間。俺は、堪えきれずに込み上げるものを吐き出した。
「あぁぁぁぁぁ!!!」
最初のコメントを投稿しよう!