三章

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「こんにちわ!よろしくね!」 ライブ二日前のリハーサルで、林山さんは現れた。 「ね?ね?アンティークってどの子?見せてよぉ」 「ね、ね、今からやろーよ!」 楽器や音響チェック中から、うろうろしている。かなりアクティブな人だ。 今日からアンティークもリハに参加する。まあ、いちスタッフゥーとして現場には来ていたので、通し稽古のようなものだ。俺はスタンバって箱の中に入る。 「では、アンティークさん入りまーす」 ガタゴトと運ばれる。 箱の中は真っ暗だし、自分でも目をつぶっているので、音に敏感になる。 「ね?あの中に入ってんの?マジで!?リハなのに?」 テンション高めな質問攻めは、俺の耳にも届いていた。 ガチャガチャと音がして、フワッと外界の空気が入ってくる。俺はまだ起きない。 「では、一曲通しまーす」 スタッフが準備し、一瞬の静寂が走る。 「アンティーク起動!」 ひろしの合図、そしてドラムのカウントが二つ入ってひろしのギターが唸り出す。 さあ、俺にスイッチが入る。 ―俺は歌人形、アンティークだ―
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