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「本当…おっきい」
私も狸を見て笑う。
狸の着ぐるみを着ている人は、よほど身長の高い人だ。
進のズボンのポケットが、ブーブーと音を鳴らした。進が携帯を取り出す。
「ごめん。友達から電話だ」
「先に買い物してるから、電話に出ていいよ」
私はカゴを取り、スーパーの中に入ろうとした。音楽に合わせ身振り手振りで踊っていた狸が、私の方を見て一瞬動きを止めた。
私も狸に視線を向ける。
狸は私に近付くと、黙ってカゴにお菓子の箱を入れた。
「ポンポコポッキー?あの…いりません」
狸は無言で私に両手を合わせた。まるで、『お願い』って、頼んでいるみたいに。
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