第6話 絶望の岸辺に

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死んでしまったと理解してしまった自分の頭の中は、様々な想いがひしめき合っていて、今にもパンクしてしまいそうだ。 「あの時、僕たちの向かう場所がここじゃなければ僕たちはきっと出会う事がなかった。僕は運命は信じていないけど、死んだ後でもこうして巡り会えた事に感謝してるよ」 彼の言葉が私の中に入ってくるが、なんだかとても遠い。 「真実を思い出した時、絶望に打ちひしがれてどうでもよくなった僕の頭の中にね、君の声はよく響いたよ。最初は正直鬱陶しく感じたけど、いつしか美しい音色のように聞こえてさ。いつの間にか笑ってた」 顔を上げられず、立つ事も出来ない私は、バス停の前で打ちひしがれ、心の中には漆黒の闇が広がっていく。 「君がいたから僕は救われた。君の存在が僕を暗闇から掬い上げてくれた。本当にありがとう。僕は君の事が大好きだ」 彼の言葉はとても素敵なのに、ずっしりと重い私の心は座り込んで動いてくれない。 そんな私の耳に聞こえてくるのは、遠くから近付いてくるエンジン音。 顔を上げてみると、遠くから近付いてくる一台のバスが見えた。 バスはやがてこのバス停の前、私の前に停車し、そのドアが自動で開く。
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