第6話 絶望の岸辺に

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思い出してしまった。あの日乗ったバスの中で起きた事。 「君と僕はあのバスの事故で死んだ。君はたまたま僕の横の座席に座っていた」 「……あなたは、私に向けて挨拶した。こんにちはって。でも……私はうまく返事を返す事が出来なかった」 「思い出したんだね。あの時、僕は君に元気のない人だなという印象を受けたんだ」 「……私は眠りについて、気付いた時には私の体は宙を舞っていた」 「そうだね。僕にとっても本当に一瞬の出来事だった。でも、一番最後に空中で君と目が合った事はよく覚えてるよ」 「……」 思い出してしまった今、あれが現実だという確かな実感があった。 言ってしまえばこちらが夢、のような感じである。 だが夢は夢を見ている本人には現実としか見えない。。 今の私にとってはこの場所、ここにいる事も現実と同じなのだ。 「想いだけが一人歩きをして、僕たちは死んだ後、目的の場所までやって来たんだ。それがここ」
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