994人が本棚に入れています
本棚に追加
「そ、お願いしまーす」
「…お願いします」
…あ、ヤバい…
…ドキドキしてきた。
「猛先輩、っ緊張します…!」
声を出さずには居られなかった。
ふっ
「!?」
「いいから早く打って!」
「は、はいっ!」
…笑われた…でも
私は緊張で研ぎ澄まされていたから絶対見間違いじゃない。
猛先輩がよくするいつものふざけて笑う笑顔と違う?!
…一瞬だったけど…いつもと違う笑顔。
それだけで私は嬉しくなった。
対局は…
ひどくあっ気ないものだった。
私の黒石は全て取られて白一色になる。
「全滅、死んじゃダメ!囲われた石は相手に取られちゃうの!取られる…つまり、殺されないように生きなくちゃ」
「はい…」
囲碁用語の中には普通に『殺す』や『生きる』『死ぬ』など、物騒な名詞が当たり前のように出てくる。
端から会話だけを聞いてしまったら怪訝に思われそう…
…猛先輩は容赦しない。
猛先輩の強さは碁盤を挟んでビシビシ伝わってきた。
そして、怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!