きっかけ

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-4月の初め、桜が舞う中、 私の大好きなおじいちゃんのお葬式が執り行われた。 高校の入学式はまだこれからで、 私は中学の制服とどちらを着ていけばいいか…悩んだ。 結局私はもう着ることがない中学の制服を着て参列した… 田んぼと小さな森に囲まれたおじいちゃんの家。 のどかで静かだった平屋のお家に人が次々と出たり入ったり… その中で私は縁側の隅にぽつん。と、 忘れ去られている囲碁盤を見つけた。 …在りし日のおじいちゃんはここでよく囲碁をしていた。 その時の姿が頭に浮かんで、 …涙が、こみ上げてくる… 気が付くとお客さんも帰り、身内だけになっていた。 伯父、伯母、そして私の母は家の中をぐるぐる動き回っている。 「何してるの?」 「…形見分けよ」 母はタンスの中を物色しながら言った。 「未來ちゃん今度高校生だよね? おめでとう!」 伯母は私に笑顔で話し掛けてきた。 「伯母さん、私も形見分け欲しい…!」
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