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「自分の中で勝手に終わらせて……橘からの電話もメールも無視して。……今考えればマジでガキっぽくて最低だなって思うんだけど、当時はマトモな判断できないくらい、いっぱいいっぱいだった……」
「………………」
「そんな時、吉田に告白されて、半ばヤケみたいな感じで付き合い始めた。……早く橘のこと忘れたくて……」
図らずも、柚子の胸にあの頃のことが去来する。
朝倉の突然の態度に戸惑ったこと、噂で新しい彼女ができたと聞いたこと、朝倉と吉田が二人並んで帰宅するところを見た時の、胸の痛み……。
何もかもが唐突で、受け止め切れなくて、消化できなくて、何度も何度も夢にみたこと……。
最近になってようやく思い出すこともなくなっていたのに、まさか三年も経ってから真実を知ることになるなんて一一…。
言葉もなく立ち尽くしていると、柚子の目の前で朝倉はふっと自嘲するような笑みを浮かべた。
「でもやっぱり、上手くいかなかった。……吉田と付き合ってても、橘の影がどうしてもちらついて、忘れられなくて……。結局、卒業して大学も離れたのをきっかけに、別れようって吉田に言ったんだ。……そしたらあいつ……」
傘を握る手にギュッと力を込め、朝倉の顔が苦々しく引き攣った。
柚子は驚いてそんな朝倉の顔を見上げる。
「フラれた腹いせなのか知んねーけど、別れ際に言ったんだ。……橘の噂なんかみんな嘘だって。……全部私が作ったでっちあげだって」
「………………!」
「俺のことが好きだったから、橘が邪魔だったから。……何とかして別れさせたかったんだって……馬鹿にしたみたいに笑いながら言われたんだ」
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