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「………………」
それを聞いても、柚子はもう驚かなかった。
話の途中から、薄々そうではないのかと感じていたからだ。
噂の出所は全て吉田で、おそらく吉田は朝倉のことが好きだったのだろう…と。
どこか冷めた意識の中で、柚子はずっと知りたかった三年前の真実を噛み締めていた。
「そう…だったんだね。……だから朝倉くん、急に態度変わっちゃったんだね」
「………………」
悔しそうに唇を真一文字に引き結んだまま、朝倉は顔を上げた。
柚子は苦笑しながら首を傾げる。
「ずっと本当のこと知りたかったの。私に原因があったなら知りたいって。……でも、今日全部わかってよかった。これでもう……」
「何がよかったんだよ、俺達ハメられたんだぞっ!?」
朝倉の剣幕に、柚子はビクッと体を強張らせる。
胸のつかえが取れた柚子とは対照的に、朝倉の拳は悔しさでブルブルと震えていた。
「あいつさえあんな嘘つかなきゃ、俺達別れることなかったんだぞ!? 橘、悔しくねーのかよっ!」
「………………」
辺りを憚らない朝倉の大声に、通行人は野次馬的な視線を投げてくる。
だが興奮しているせいか、朝倉はそれに気付かないようだった。
「………………」
柚子はほっと一つ息を吐き出し、朝倉を見上げた。
「それは……違うと思う」
「…………え?」
「確かにきっかけを作ったのは吉田さんだけど。……でも、私に確かめなかった朝倉くんにも、朝倉くんに聞けなかった私にも、非があるんじゃないかな」
「………………」
淡々とした柚子の言葉に、朝倉はグッと言葉を詰まらせた。
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