あれから三ヶ月。

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「あ、朝倉くん? 何言って……冗談やめてよ」 「冗談じゃねーよ!」 掴まれた肩が痛くて、柚子は顔をしかめる。 興奮で朝倉はそれに気付かず、力の加減ができていないこともわかっていないようだった。 「ずっと忘れらんなかった。ずっと胸にしこり残ったまんまで……」 「………………」 「あの日橘と偶然再会して、運命だって思ったんだ。……もう一度やり直すチャンス、神様がくれたんだって……」 戸惑い、柚子はただ朝倉の顔を見つめ返す。 朝倉の態度に、今まで感じたことのない恐怖のようなものを感じた。 「朝倉くん、お願い、離し……」 とにかく掴まれた腕から逃れたくて大きく身じろぎした、その時。 柚子の背後からぬっと誰かの手が伸びてきたかと思うと、あっという間に朝倉の手首を掴んで捩り上げた。 「勘違いだ、バーカ」 聞き覚えのある皮肉げな声を耳にし、柚子はバッと肩越しに背後を振り返る。 するとそこに、目一杯に不機嫌な顔をした証が立っていた。 驚き息を飲む柚子の前で、証は朝倉を突き飛ばすようにして二人を引き離した。 すぐに柚子を背後に庇い、ギロッと朝倉を睨み据える。 「勝手に触んな」 ぶっきらぼうにそう言い捨てた証を、朝倉は唖然と見上げた。 先程までの興奮が驚きに変わったようで、どこか惚けたような表情になった。 「あ、証……なんで……」 驚いたのは柚子も同じで、声を上擦らせて尋ねると。 証は仏頂面のまま、今度は柚子にジロリと強い視線を投げた。  
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