あれから三ヶ月。

30/39

2052人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「だから言ったろーが」 「は?」 「ったくお前はいつまで経っても警戒心っつーもんを身につけねーよな」 呆れるというよりは怒った口調で証は柚子にそう言った。 未だに何故ここに証がいるのかよく理解できていない柚子は、ポカンと口を開けてただ証の顔を見上げていた。 先に我に返ったのは朝倉のほうで。 混乱しつつも、証にこの場を邪魔されたことだけはわかったようだった。 惚けていた表情をスッと険しくし、朝倉は証を睨みつけた。 「………誰なんだよ、お前。邪魔すんじゃねーよ」 「………………!」 朝倉の乱暴な物言いに、今度は柚子が我に返る。 証がどんな性格か知らないとは言え、そんな口をきくとはなんと命知らずな……。 「…………あ?」 案の定、証は不機嫌さをあらわにして真っ向から朝倉の視線を受け止めた。 横でそれを見ていた柚子は縮み上がる。 だが証はそんな柚子の腕を掴み、ぐいっと朝倉の前へと体を押しやった。 「………………!」 驚いた柚子が証を振り返ると、証は頷いてからクイと朝倉のほうを顎でしゃくった。 「俺が誰かって聞いてんぞ。お前の口から言ってやれよ」 「……………え」 「はっきり言ってやれ。……んですっぱりトドメ刺してやれ」 柚子は目を見開き証を見つめる。 すると証はもう一度大きく頷いた。 「………………」 証にしては感情を抑えていると、柚子はそう感じた。 柚子自身に、過去の恋にケジメをつけさせようとしているのだということが、この時ようやく理解できた。  
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加