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「こいつに会ったのは一年前だけど、そん時はハタチのくせにまだ処女で、信じらんねーぐらい恋愛オンチだったんだぞ」
「……………っ」
真昼間から公共の場でとんでもないカミングアウトをされ、朝倉ばかりでなく柚子までもが目を見開き思わず息を飲んだ。
とっさに柚子は証の袖を掴む。
「………あ、証! あんた何言ってんのよっ!」
「その原因の一つは、てめぇのせいだろーが!」
興奮のせいか、柚子の制止も聞かずに証は言葉を続けた。
「ちゃんと別れ話もされねーまま一方的にシカトされて、更には噂で他の彼女できたって聞かされたこいつの気持ち、考えたことあんのかよ! 傷ついて、ずっと引きずったに決まってんじゃねーか!」
「………………」
「それから何年も経って、今やっと前に進み始めてんだよ! それを今更ノコノコ出てきて運命だなんだほざきやがって、あげくフラれたからってうだうだ女々しく恨みごと言ってんじゃねーぞ!」
ずっと言いたいのを我慢していたのか、証は一気にそう言い切った。
最後にギロッと朝倉の顔を睨み付ける。
その迫力に気圧されたのか、証の言葉があまりにも正論すぎたせいか、朝倉はグッと黙り込んでしまった。
(…………証………)
胸が熱くなり、柚子は唇を噛んで凛とした証の横顔を見上げる。
自分の気持ちを全て代弁してくれて。
なおかつ自分の為にここまで証が怒ってくれたことが、たまらなく嬉しかった。
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