【番外編(1)】いちばん大切なひと

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  「あっ! 何するのよぉ!」 「見てもわからないだろ。マスター、甘めで度数の低いヤツ、お願い」 さっきのおじさん……いやマスターがにこやかに「かしこまりました」と注文を受けてくれた。 私は何となく釈然としなくて、つい文句を言ってしまう。 「ユリナだって選びたかったのにぃ……」 膨れっ面でそう言うと、修平は軽く笑った。 「何も一杯飲んだら帰ろうって言ってるわけじゃないだろ。次までに決めておけばいい」 「……でも、こんなの、わかんないもん……」 ベースって何? リキュール? カクテルの名前? 英語混じりの華やかな名前たちに、疑問ばかりが浮かんでくる。 手元のメニューの右側の一角を、そっと修平の指先がなぞる。 .
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