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「パパー!!」
公園から入り口に向かって走る少女。
走ると、2つに結んだ髪がぴょんぴょんと跳ねる。少女が向かう先には一人の男性が立っていた。
「ゆず。そろそろ帰ろうか」
「うん!パパの手あったかいねー」
「ゆずの手は少し冷たいねー」
二人は手を繋いで公園を後にする。
手を前後に揺らして歩くその姿はとても幸せそうだった。
帰り道の道中、ゆずが幼稚園で習った歌を一生懸命に歌っており、その姿は可愛らしい。
小さな口からこぼれる声はまだどこか舌足らずさが残っている。
それでもメロディーを外さないとこをみると上手に歌えているんだろう。
「ゆずは歌が上手だねー」
「ふふっ!ママが教えてくれたの!!」
ゆずの言葉に、確かに彼女は歌が上手だったなと思い出す。
いつも何かしらの歌を口ずさみ、時には自分で作詞作曲して歌っていることもあった。
彼女の声はやわらかくて、とても温かかった。
いつかこの娘も彼女のように優しい声で歌う女性になるのだろうか。
我が娘の将来に想いを寄せて見つめると、それに気づいて愛らしい笑顔を見せてくれる。
「ゆずもママみたいに歌えるよ、きっと」
「ママみたいに?」
「うん」
「じゃあ、もっと練習してパパにたくさん聴かせてあげるね!!そしたらさみしくないでしょ?」
「………っ」
名案でしょ、っとばかりに笑顔を向けてくる愛娘に心奮わせる。
口を手でおおって我慢するが、無理だ。
「パパ、また泣いてるの?」
「ずびっ………沙樹さんっ……ずびっ」
*
(もう、パパは泣き虫さんね)
(ゆずぅぅぅー)
(よしよし)
2014/01/06
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