1.高校1、2年生

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3月30日 結局清剛は5日間我が家に滞在した。 お祖父様から3日目まで音沙汰はなく、4日目にようやく我が家に電話をしてきた。 対応したのはメイド長である黛─まゆずみ─、彼女は早年30代にしてこの家の使用人たちのトップに君臨している恐ろしい女だ。 「早急に孫を送り返せ」と電話越しに偉そうにのたまうお祖父様を、黛は氷のように冷たい声で「直接ご本人に仰って下さいませ。海原家は三上家のご子息をお預かりしているのではありません、ただ長海坊ちゃんのご友人がいらしているだけですわ」とまだ何か言い募るお祖父様を切り捨て電話を切った。 その後暫く連絡がなかったが(後から聞いた話によると、怒り狂ったお祖父様は俺様の父親、つまり海原家当主に文句をつけようとして家族に止められていたらしい)お祖父様は2日後の昼、突然海原家にやって来た。 相変わらず非常識な爺だ、助けを求めに来た清剛ならともかく、三上家の一員として海原家に訪問するならばアポは取っておかなければ失礼だろうが。 絶対零度の目をした黛に追い返されそうになり玄関先で喚いていたお祖父様を見かねて、清剛が飛び出した。 「貴様が来いと言うからわざわざ来てやったというのに、何だその態度は!儂を誰だと思っている!」 「私はそのようなことは申しておりませんわ、海原家にご用でしたらアポイントメントを取ってからお越し下さいませ」 面倒になってきたのか剣呑な目つきになる黛を、清剛がわたわたしながら止めた。 謝りながら大丈夫だと黛に繰り返す清剛の腕を掴んで、お祖父様は強く引っ張った。 待って、と抵抗する清剛の頬を、お祖父様は平手で打った。 バチンと痛そうな音が響く。 目を丸くして頬を押さえる清剛に、お祖父様は怒りを滲ませた声で吐き捨てた。 「お前は、儂に迷惑をかけることしか出来ないのか。黙って従えばいいものを」と。
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