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昨日の夜だ。
一緒に寝たいと甘えた事をぬかす清剛を渋々俺様のベッドに入れてやってから暫くして、あいつは小さな声で言ったのだ。
部屋を勝手に改造されたのは、実はあんまり怒ってないんだ。もっと理不尽なことも沢山されてきたしね。ただ、怖くなったんだ。言いたいことも言えないまま、これからの人生お祖父様の操り人形のように生きていく気がしてさ。
俺様は、お祖父様に叩かれ詰られ怯えた表情で固まってしまった清剛を見て、その台詞を思い出した。
あぁ、確かにこれではまるで操り人形、お祖父様の思い通りに動くパペットのようだ。
だからこそ、今戦うのだろう、清剛?
そっと震える小さな背中に手を添える。
清剛はハッと俺様を虚ろな瞳で見上げ、その瞳をじわじわ潤ませた。
1つ頷いてやると、キュッと目をつぶり思い切ったようにお祖父様の手を振り払った。
驚いたように目を見開いたお祖父様に向かって清剛は震え泣きそうになりながら振り絞るように叫んだ。
「僕は…僕は、お祖父様のために生きてるんじゃない!お祖父様にとったら些細なことでも、僕にとったら自分を殺されてるみたいに感じるんだ。だから、このままお祖父様に従って家には帰れない、お祖父様が分かってくれないと駄目なんだ!」
情けなく声を裏返しながらも必死に訴えるのに、お祖父様は数秒清剛を睨んだ。
顔中に刻まれた皺を深くして、勝手にしろ、と吐き捨てると一度も振り返らず帰っていった。
はぁぁぁ、と大きくため息をついて、清剛はその場にへたり込んだ。
限界まで瞳に涙を湛えながら手の平で顔を覆う。
言っちゃったぁああどうしようぅぅぅと先ほどより情けない声でへこたれる。
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