1.高校1、2年生

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座り込んだせいでいつもよりも低い位置にある頭を労るように撫でてやった。 自然な上目遣いで見上げてくる清剛にニヤリと笑う。 「あーあ、言ってしまったな。お祖父様怒ってるぞ」 「うぅ…」 「もう家には入れてもらえないな、勘当されるかも?」 「ううぅぅぅ……」 「で、感想は?」 「………………スッキリした」 そう唇を尖らせながらも憑き物が落ちたように晴れやかな顔をする清剛に、俺様はつい微笑んでしまった。 普段しないような柔らかい笑顔に固まる清剛の髪を俺様は優しくすいた。 「お前の家族はお祖父様1人ではないだろう?待ってくれている人がいる、お前の帰る場所はそこだ。きっと一回り成長した息子を喜んでくれるさ」 清剛はうん、と子どものようにコクリと頷いた。 「どうしても駄目になったらまた、」 俺様を頼ればいい、と続けようとして、慌てて飲み込む。 不自然に切れた台詞に不思議そうに首を傾げる清剛に、取り繕うように「周りを頼ればいい」と告げる。 嬉しそうに笑った清剛に俺様は喜ばしいような悲しいような切ないような、複雑な気持ちになった。 昔から余計なことは言うくせに本音は隠してばかりだった清剛が、自分を支配しているような存在のお祖父様に思いをぶつけることが出来た。 これからもこいつは様々な挫折や後悔を味わいながらも成長していくだろう。 それを、今までのように近くで支えてやれないことが、とても、とても悔しく思えたのだ。 同じ年月を積み重ねる、それがどれだけ幸せなことか、もうそれが出来なくなると知ってから分かるだなんて、馬鹿げている。 未来の約束1つ出来ないまま、俺様は愛してくれる両親と堅物なお祖父様が待つ家へと帰って行く清剛を見送った。 あぁ、本当に馬鹿げている。 (俺様の時間だけ止まるなんて、今更だというのに)
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