2.高校3年生

10/12
523人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
5月13日 東也がどうしても転入生に会いたいと言うので、4人でお昼の時間に食堂まで会いに行った。 生徒会メンバーにざわめく生徒を無視して、東也は真っ直ぐ転入生まで駆け寄った。 親衛隊を刺激しかねないその行為に眉をひそめながら俺様は東也を追った。 普段なら生徒会という立場を忘れず行動するのに、そんなに転入生のことを気に入ったのか。 有希!と親しげに名前を呼ばれ振り返ったのは、黒いもじゃもじゃだった。 膨張した髪の毛に瓶底眼鏡のせいでその顔ははっきりとは見えない。 ただ、その恰好とは裏腹に意志の強そうな口元が印象的だった。 生き生きとした東也の様子に興味を持ったのか、清剛と浩介も転入生へと近寄り話に混ざり始めた。 俺様は1人、その様子を少し遠くから眺めていた。 あいつらが自分から他人に関わるなんて初めてのことで。 ゆっくりと瞬きをして、その光景を焼き付けた。 あと、一年。 一年しかない。 転入生は、あいつらを変えるきっかけとなるだろうか。 そうなればいいと願いながら、俺様は話の輪へと加わった。 転入生の名前は相原有希─あいはらゆき─。 良くも悪くも真っ直ぐで、今まで俺様たちの周りにはいなかったタイプだ。 あけすけな物言いは嫌いではないが、いかんせん声が大きすぎる。 最近頭痛が酷いのに、あんなに大きな声で話されると頭に響いてしょうがない。 残念だが、俺様は相原とは距離を置いた方がよさそうだ。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!