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唯澄は、楽しそうに倉庫の中の物を見つめる涼葉を、確かめるように見つめた。
涼葉は物、人、この世の万物すべて一目見ただけで、そのものの歴史を把握する事ができるのだ。涼葉本人は『ただの歴史好き』だと言っているが、この能力は他人には真似できないものだ、と思う。と、いっても人並みはずれた観察力と、知識があるだけなのだろう。あまり深くは考えなかった。
唯澄は大きくため息をついた。
彼は、骨董品や世界遺産、歴史書といったものに興味をもつ歴史オタクなのだ。
偽物、本物と見分けがつけられるぐらいなんだから、当たり前か。好きな事に没頭することはいいと思うが、気が付いたら骨董品や歴史書が増えているというのはやめて欲しい。
――無理かなー、それは。
自己解決をして、唯澄は涼葉を見つめた。真剣に書物に目を通している。
涼葉には人に言えない秘密があった。
といっても、身長の問題や自分の癖などといった、人間が日常生活において、他の人間に中々言い出せない秘密とは全く持って違うもの。彼の人生に大きく関係する秘密だ。まぁ、前者の悩みは、多少気にしているようだが。
彼は見た目も中身も、人間そのものだが、実は千年以上生きている猫又と言う妖怪だという。
猫又とは、五十年以上生きた猫が、霊力(神通力)を持ち、人間の思考や人語を操ることが出来るようになった妖怪のことだ。彼らの最大の特徴は、二本に枝分かれしている尾で、普通の猫の二倍近く大きい。
非常に信じがたい話だったが、彼が黒猫に変身するのを見たことがあるため、信じるしかなかった。
「ちぇっ、偽物かよー」
椋汰は、つまらなそうに言った。
彼は毎日くだらない実験をしたり、部屋が爆破するような実験をするとんでもない化学オタクだ。
彼もまた、ただの人間に見えるが、涼葉と同じく千年以上生きている九尾だ。
白面金毛九尾の狐と呼ばれる九尾で、妖狐の中でも一番強い神通力を持つと言われる妖怪らしい。
「うーん……。やっぱり、信じられないなぁー」
「はっ? いきなりなんだよ」
唯澄がつぶやくと、涼葉は驚いたように言った。唯澄は気にせずうんうんと頷き、二人を見つめる。
でも、二人が妖怪だろうが人間だろうが僕には関係ない。僕にとって二人は大切な人なんだから。
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