唇の距離

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結局、三浦君の追及はかわし、 午後の会議に備えて、 私達は早めの昼食をとるため外に出た。 社に戻る帰り道、三浦君は横を歩きながらブツブツとプレゼンのおさらいをしている。 顔立ちの良さと愛敬で結構人気があるのは知ってるけれど、私にとっては安心できる弟分だ。 でも、麻紀のことがあって以来、彼の態度にどこかひっかかるものを感じるようになった。 彼女がいるくせに、私絡みで戸川君にあからさまな意地を見せるのは、姉に向ける弟の駄々なのか、それとも何かのカモフラージュなのか。 言行一致しない三浦君の本音は、どこか全然別のところにあるのかもしれない。 きっとそこには、少なからず麻紀が関わってるんだろう。 いつかの夜の、 麻紀の苦しそうな声音を思った。
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