唇の距離

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「はぁ……」 「先輩、今週ため息多いですね」 「……そう?」 大会議室で午後の会議の準備をしながら、 どうしたら彼に会えるのか、 思案を巡らすばかりの自分に、 また溜息をつく。 「先輩、僕、今朝室長が電話してるの、聞いちゃったんですけど」 「…何の電話?」 あまり興味はなかったけれど、 ぼんやりと三浦君に聞き返した。 「この秋、アメリカ駐在が一人、 帰国して経企室に来るらしいですよ」 「へぇー」 「へぇ、て先輩。先輩がペア組むんですよ、その人と」 「…そうなんだ」 その人じゃなくて、 戸川君とペアなら良かったのに。
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