唇の距離

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「先輩は、…」 三浦君の声に笑みを引っ込めて顔を上げると、三浦君が少し元気のない顔でこちらを見ていた。 でも三浦君はその続きを繋ぐこともなく、フッと目を逸らして話題を変えた。 「…室長とは新体制の話だったんですか?」 「ああ…」 私には気の重い話だった。 三浦君が言っていた、今度着任する片桐主任と組んで、海外マーケット分析に新しく取り組んで欲しい、と。 そのことに連動するように、 この秋に私も主任に昇格することを告げられた。 「すごいじゃないですか。 普通、主任は早くて入社8年目からですよ。 一年半、早いです」 「でも、これは仕事の評価じゃなくて、私はモデルケースにされてるだけなの」
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