唇の距離

34/37
6291人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「お疲れ様!すごく良かったよ」 「なんか、嫌な汗いっぱいかきました…」 遅い夕方、長い午後の会議の大一番を終えて脱力した三浦君は、もうこれ以上の気力は無さそうだった。 「上出来だったよ。 初めてなんて嘘みたい。 二度三度やれば、慣れて平気になるから」 「そんなもんですか? 緊張でトイレ行きたくなるし、 質疑で詰まるし、 もうどうしようかと…」 経企室の机に顎をのせてぐったりしたまま、しきりに腑甲斐ない自分を悔やんでいる。 「今日は早めに帰ったら? 早帰りの日だし」 「でも、まだ仕事残ってます…」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!