唇の距離

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「先輩、分かってます? その人とペアを組むってのは、 海外マーケティング担当、 先輩に決まったってことですよ」 「それ、三浦君の予想でしょ?」 資料を席上に並べながら、興味なく返した。 「違いますよ! 室長が『成瀬に組ませる』って、 その人と電話してたんですから」 「え。そうなの?」 初めて顔を上げる。 私には何の話も来てないのに、 状況は進んでいるらしい。 「もう本決まりなのかなぁ…」 「先輩、その新任者のこと知りたいでしょ」 「うん」 「また飲みに行ったら教えてあげます」 「じゃ、いいや。 どうせそのうち分かるし」 「ひどいや、先輩」 ほんと、 三浦君と喋るのは気楽でいい。
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