唇の距離

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「…そうなんだ」 屈んでプロジェクターを調節する 三浦君のトーンが少し落ちた。 「さてと。これでオッケーね。 三浦君、電気落とすよ」 窓の無い会議室は、 明かりを消すと真っ暗になる。 「今日のプレゼン、 三浦君やってみたらいいのに。 やりやすいと思うよ」 暗やみの中、そう言いながら慣れた手探りでドアを押し開けた時、不意に後ろから肩を掴まれた。 「…ちょっと待って下さい」 振り向くと、ドアの隙間から差し込む廊下の薄明かりに、三浦君が妙に真剣な顔をしているのが分かった。 「え…?」 肩を掴む三浦君の手の強さに、 違和感を感じたその時。 外側から、 ぐいっとドアに手が掛かった。
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