唇の距離

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麻紀の言葉や、 三浦君の態度が匂わせるもの。 なんだか嫌な予感がした。 「急ぐ用事って…プレゼンのデータよね? 私のパソコンに入ってるから、 後で送るけど」 だからわざと、仕事の話に逃げ道を作ったつもりだったのに。 「そのことじゃな…」 「おい」 恐らく“仕事の話じゃない”と否定しようとした三浦君の言葉を、私の背後から戸川君が遮った。 「俺は出なおすから。 でも話するなら電気は点けろ。 それから、」 戸川君は、きっとまだ私の肩を掴んだままの三浦君の手を指差したんだろう。 戸川君を見据える三浦君の視線が揺れた。 「先輩に対する礼儀は守れよ」
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