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あの夜、小野寺さんの姿はほとんど直視できなかったけれど、名札を見る前からなぜか分かった。
隙のないメークにグロスの口角だけを上げた笑顔は目が全く笑っていなくて、返す私の笑顔も強張った。
また顔を伏せて箸を進めるふりをしていても、頭上で交わされる、目配せらしき気配が気になる。
結局、小野寺さんは私の隣に、もう1人の女の子が三浦君の隣に無言で座った。
小野寺さんは何か言ってくるつもりなんだろうか?
身を硬くする私とは対照的に、三浦君は見知らぬペアが来たことなど気にも留めず、延々と喋り続けている。
いつもなら呆れ返る呑気さも、今はそのお気楽な三浦君の存在にすがりたい気分だ。
しばらくしても何も話し掛けてくる様子がないことに少しホッとした時、ふと斜め前からの刺すような視線を感じて顔を上げた。
小野寺さんに比べるとおとなしそうな雰囲気のその彼女。
でも、彼女がさっと視線を外すまでの一瞬で、私は直感で悟った。
彼女の目の奥の冷たさ。
私とは初対面のはずなのに、それは敵意と取れるものだった。
邪推すれば、
私をよく観察できる座り位置。
……まさか。
この子、もしかして…。
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